大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和60年(あ)559号 決定 1985年6月19日

本籍

長崎市十人町一二六番地

住居

同 上野町二三番七号

無職

松島昇

大正九年一月二七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、昭和六〇年三月二六日福岡高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人松尾千秋の上告趣意は、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 谷口正孝 裁判官 和田誠一 裁判官 角田禮次郎 裁判官 矢口洪一 裁判官 高島益郎)

○ 上告趣意書

被告人 松島昇

右の者に対する所得税法違反被告事件について、上告の趣意は左記のとおりである。

昭和六〇年五月 日

右弁護人弁護士 松尾千秋

最高裁判所 第一小法廷 御中

原判決は被告人に対し、懲役一年六月及び罰金三六〇〇三円に処する。右罰金を完納することができないときは、金六万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。この裁判確定の日から四年間懲役刑の執行を猶予する旨の判決宣告をした。

しかしながら、原判決も認定しているとおり被告人には次のような有利な情状がある。

すなわち

一、昭和六〇年二月一三日長崎税務署長に対し所得税の更正の請求をした結果、昭和五七年度分の必要経費として六九三九万五五一二円が必要経費として認められ、同年度の所得金額が零と更正されている。

二、昭和五九年三月五日修正申告によって納付した昭和五七年度分の所得税が全部還付されたこと。

三、重加算税も右還付金に充当され未納分がなくなること。

四、長崎税務署長によって、被告人は遅くとも昭和五八年四月には金融業を廃業し、今後この種の税法事件について再犯のおそれがないこと。

その他の情状を勘案すれば、前記原判決の刑の量形は著しく不当であり、これも破棄しなければ著しく正義に反すると思料する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例